平成25年(2013)には伊勢神宮と出雲大社の両神社で遷宮が行われました。2つの遷宮について紹介します。
約1300年前の姿を現在に伝える
本来は本殿にいる神様を他の社殿(場所)にお遷しすることを「遷座」あるいは「遷宮」と言います。平成25年(2013)には伊勢神宮と出雲大社の遷宮が重なり、日本中が沸きました。
伊勢神宮の式年遷宮は20年に一度行われ、内宮(皇大神宮)、外宮(豊受大神宮)の正殿をはじめ、14ある別宮、宝殿や付属の殿舎、御垣まで、約60棟に及ぶ神殿を造り替えます。さらに中に納める神宝類もすべて新調され、その数は約1800点にも及びます。日本を代表する古社である伊勢神宮ですが、実は最も新しい神社でもあるのです。
造り替えるといっても、取り壊したその跡地に殿舎を新築するわけではありません。内宮、外宮の正宮と別宮には、それぞれ隣に同じ面積の敷地があり、全く同じ様式の宮殿を造るのです。こうして隣接地に同じ社殿が新築されると神様が遷座(遷宮)されるのです。つまり、20年に一度、神様はその隣り合った敷地を左から右へ、右から左へとお引っ越しをされるわけです。
式年遷宮は、約1300年前の40代天皇天武天皇が制度を定め、天武天皇の皇后であり次代を継いだ持統天皇2年(688)にはじまりました。戦国時代に一旦中断されたり、幾度かの遅延などはありましたが、原則的に20年に一度式年遷宮は行われてきました。
どんなに頑丈な建築物も時の経過に伴い、完成時の姿は失われます。式年遷宮は技術継承可能な20年という歳月を設けて造り替えることで、その姿を維持しているのです。
60年ぶりに行われた大遷宮
出雲大社の大遷宮は伊勢神宮のように社殿をまるごと造り替えるわけではありません。古くは高さ約48メートルあったともいわれる社殿を造り替えることは莫大な費用と時間を要します。
出雲大社の大遷宮は過去に29回行われています。現在の本殿は、延享元年(1744)に造営された貴重な建築物です。以来、約270年間に4回屋根が葺き替えられる修繕が行われました。記憶に当たらし平成の大遷宮の前に行われた遷宮は昭和28年(1953)のこと、さらにその前は72年前の明治時代に行われました。
平成の大遷宮では、平成20年(2008)に、御祭神が本殿から仮殿に遷座される「仮殿遷座祭」が執り行われました。そして翌21年から、本殿だけでなく摂社、末社も修繕工事が進められました。そして伊勢神宮の式年遷宮(内宮、外宮正殿の遷宮)が行われた同じ年の平成25年に、修繕が終わった本殿にご祭神がお還りになる「本殿遷座祭」が執り行われました。