神社は単なる「宗教施設」ではありません。なぜ人々は神社に集まるのか。それは神社が持つ3つの要素があるからです。
自然環境を重んじる神社
私たちはなぜ神社にお参りするのでしょうか。人によって理由はさまざまですが、神社に対して否定的な意識を持つ日本人はほとんどいないでしょう。
日本人が神社に魅かれる理由は、神社は日本人が古来守ってきた3つの要素があるからです。
まず1つ目は「自然」です。神社の構成要素の1つに鎮守の森があります。鎮守の森は社叢とも呼ばれ、社殿と森がセットになった概念です。森はそもそも神域であり、神様が住む場所です。鎮守の森は、公園の森林のように植生、整備されたものではなく、自生のものが多いのが特徴です。そのため、巨木などが残り、ご神木として祀られていたりします。
森は動植物をはじめとする多様な生物を育む母体であり、まさにさまざまな神々が集まった象徴的な存在と言えるでしょう。海外のキリスト教、イスラム教、仏教などの宗教施設には基本的に森林はありません。森を神様が宿る場所として特別に重要視する宗教は世界的に見ても非常に珍しいと言われます。
自然が減少した都市部では、鎮守の森はもともと自然と共に暮らしてきた日本人が自然に触れられる貴重な場です。鎮守の森は生物多様性を再認識し、心に活力を与える場でもあるのです。
伝統文化のタイムカプセル
2つ目は「伝統」やその地域の歴史、習俗、文化などを継承し、後世に伝えるタイムカプセルとしての機能です。青森県の三内丸山遺跡では、縄文人が祭祀を行っていたと考えられる遺跡が発見され、神道の原型が3千~4千年前からあったことがわかってきました。社伝によると紀元前の創建とされる神社は日本各地にありますが、古代の日本人が持っていた文化や習俗が神社に脈々と残されているのです。
町の鎮守様においても神社には創建以来積み重ねてきた祭祀などが継承されています。また神社は、お祭りなどで人々が集まる数少ない公共施設の1つでもありました。そのため、お祭りなどではその地域の特徴が最も顕著な形で表れ、継承されます。また工芸品や絵馬などの奉納品が保存され、文化財の保管施設としての役割もあります。
家族の傷なの醸成施設
最後に挙げられるのが家族や親族と「絆」を深める場である点です。初詣や七五三詣でなど、神社で楽しい思い出を過ごした記憶は誰にでもあるでしょう。学校や家族いきつけの店など、思い出の場所はほかにもあるかもしれませんが、数十年、さらには数百年、同じ場所で同じように残る施設はほかにありません。
このことは過去についても言えます。神社が祖先信仰をベースの1つにしてることは前述しましたが、自分の親も、祖父も、曾祖父も、さらにはずっと前の先祖まで同じようにお参りしていたかもしれません。過去から未来にかけて、神社は時を越えてほとんど変わらぬ姿のまま残り、先祖と子孫を繋ぐ場所となるのです。