きれい好き 掃除は大切な神事

神話を起源にする日本人のきれい好き

日本人からすれば信じられないことですが、外国では毎日お風呂、あるいはシャワーに入る習慣がない国が多くあります。世界から高く評価されている温水洗浄便座型トイレや抗菌仕様の素材、環境浄化装置など、日本人のきれい好きは世界的に見ても群を抜いています。

アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリングは、建物のガラスが一枚割れていると、その周囲の治安が悪化するという「割れ窓理論」を提唱しました。清潔に保つことは心の安定にもつながることが心理学的にもわかってきているのです。日本では古来清浄さを尊んできましたが、単に病原菌から身を防ぐという意味以上に、清浄であることは心にポジティブな影響を及ぼすのです。

神職は祭事の前には潔斎沐浴を行い、身を清めます。また私たち参拝者もお参りの前には手水舎で手と口を清めるのがマナーです。これらは穢れを祓うもので、その起源は記紀神話に描かれています。出産が原因で亡くなった伊邪那美命に会いに黄泉の国へ行った伊邪那岐命は、地上世界に戻った際に全身を清める禊を行いました。このときの禊で最高神となる天照大神が生まれました。穢れを祓うことで、新しい清らかな命が生まれる「死と再生」の観念が見られます。

掃除は神道の基本

キリスト教では人は生まれながらにして原罪を背負っています。一方、神道では赤ちゃんは一切の穢れのない「明き、清き、直き、正しき」存在で生まれてくるとされます。しかし、生きているうちに知らずに穢れが身についてしまうので、適宜禊を行う必要があると考えるのです。全国の神社で6月と12月に行われる大祓は、半年ごとに穢れを祓う祭事です。

神職の務めは「掃除にはじまり、掃除に終わる」と言われるほどです。社殿や境内を掃除して清らかにすることは、神様を穢れから祓い、お力を保つための大切な奉仕です。その最たる例が、社殿や宝物を造り替える伊勢神宮の式年遷宮と言えるでしょう。さらにわざわざ寒い時期に行われる年末の大掃除は、新年に年神様を迎えるために1年の穢れを祓う神事的行事です。日本人のきれい好きは、穢れを祓い、神様のお力を発揮して恵みをいただくための大切な神事のひとつなのです。