お賽銭【神社の作法】

もともとはお米だったお供え物

お賽銭の作法

会釈してから賽銭箱の前に進み、お賽銭を額の前で祈りを込めてから入れる。

貨幣が流通する以前のお供え物

参拝する際には賽銭箱に気持ちのお金を入れます。しかし、神道の原型は日本で貨幣が流通する前からあります。

神社ではお祭りの際には神前にお米や山海の幸、お酒などをお供えします。家庭の神棚には米、塩、水、酒をお供えします。また、これらの食べ物のほかに、神社では幣帛と呼ばれる供え物を捧げます。

帛は布のことで、古代において最も貴重なものでした。記紀神話においても天照大神の宮居で機織りを行っていたという記述があります。

幣帛は神様が宿る依代とも考えられ、今日でも皇室から神社に下賜されるお金は幣帛料と呼ばれます。

お賽銭はこれらのお供え物の簡易版です。もともとはお米を白い紙に巻いて包んだ「おひねり」として供えました。日本では中世において各大名家の力を石高で比較しました。石高とは米の収穫量のことです。江戸時代には武士の給料を米で換算しました。米は日本人にとって単なる食べ物以上の意味があります。

その重要性は、記紀神話にも描かれています。イネは、天照大神の孫である瓊瓊杵尊が地上世界を治めるために降臨する際、天照大神から授けられたものです。米は神様の恵みを象徴するものであり、お米をお供えすることは、この恵みに感謝する行為なのです。

中世になって貨幣経済が発達すると、米に代わってお金が奉納されるようになりました。

お賽銭はお願い料ではない

お賽銭は、お願いに対する対価ではありません。賽銭の「賽」とは、「神様に感謝をする、お礼をする」という意味です。金額が高ければ願い事が叶いやすいということではありません。

また、よく「5円玉がいい」とか「二重のご縁に恵まれるように25円がいい」などと言われます。このような語呂合わせのゲン担ぎは日本人が好む独特の文化です。神社参拝の一つの楽しみ方とも言えるでしょう。

あくまでも感謝の気持ちの表れとしてお賽銭は入れるものです。無理のない範囲で金額を決めるといいでしょう。

入れる前に祈りを込めて

お賽銭はお供え物です。賽銭箱に入れる前に、額の前で祈りを込めるといいですね。

お賽銭は投げ入れて音を出すことで、鈴と同じように邪気が祓われるとされる一方、神様へのお供え物ですので丁寧に静かに入れた方がいいとも言われます。

いずれにしても感謝の気持ちを忘れず、乱暴ではない所作でお賽銭を入れるようにしましょう。