拍手【神社の作法】

尊い存在に行う日本古来の礼儀

二礼二拍一礼の作法

  1. 軽く会釈をし、神前に立つ。
  2. 賽銭を入れ、鈴を鳴らす。
  3. 両手の指を伸ばし、足の横に添えて姿勢を正す。2回、90度のお辞儀をする(二礼)。手は膝のあたりに添える。
  4. 両手を胸の前で合わせ、右手の指先を少し下にずらし、2回拍手をする(二拍)。拍手が終わったら指先をそろえてお祈りをする。
  5. 姿勢を正し、先ほどと同じように1回、90度のお辞儀をする(一礼)。
  6. 会釈をし、その場を去る。

重要な作法

神社では、さい銭箱にお金を入れ、鈴を鳴らし、二礼二拍一礼の作法で参拝します。神様に対して礼、お辞儀をするのは世界共通のマナーです。

ただし、キリスト教やイスラム教などでは、神様以外にお辞儀をすることはありません。特にユダヤ教では、神以外へのお辞儀は禁止されています。

日本では、人に対してのお辞儀は1回ですが、神様に対しては2回拝礼します。これは「両段再拝」という伝統的な作法に由来しています。

両段再拝

両段再拝とは、再拝(2回の拝礼)を2回行うことです。祭祀において、現在も行われています。

一般の参拝方法である二礼二拍一礼は、「両段再拝」に基づいて明治時代に規定されました。礼は上下への縦の動きの作法、拍手は左右への横の動きの作法です。縦横に作法を行い、さらに2回繰り返すという最大級の敬意が二礼二拍一礼には込められています。

古代日本から続く作法

両手を合わせる祈りの作法は、仏教でもキリスト教でも見られます。でも、神様に対して手を叩いて音を出す動作をするのは神道特有のものです。

参拝の際の拍手には、

  • 願い事をする際に神様を呼び起こすため
  • 大きな音を出して邪気を払うため

など、諸説あります。

3世紀の日本の姿を伝える中国の歴史書「魏志」倭人伝には、倭人、つまり古代の日本人特有の文化として「身分の高い人に対して、手を拍つことで、跪拝に代わるものとした」とあります。「跪拝」というのは、ひざまづいて拝礼をする中国の礼儀のことです。

拍手は尊い存在に対して弥生時代から引き継がれている日本独特の礼儀です。

最古のコミュニケーション

日常生活で拍手を行う場面といえば、感動した場合などに連続して手を叩く行為ですね。日本において観劇などで拍手が行われるようになったのは大正時代あたりからだそうです。

これは欧米の習慣が日本で一般化したものですが、素晴らしいものに対して拍手をする行為は、日本だけでなく人類共通の動作であることを物語っています。

実は、拍手の動作は人間だけのものではありません。チンパンジーが手を叩いて感情を表現している姿をテレビなどで見たことがある方は多いのではないでしょうか。

拍手は人間が言葉を獲得する以前の意志表現の方法の一つだと考えられています。姿の見えない神様、人ではない巨木などの尊い存在に対して、古代の人々は言葉ではなく手を拍つことでコミュニケーションしようと考えたのかもしれませんね。